[相談]
先日、私が通っている大学(学校法人B学園が運営)では、アルバイト先の休廃業等によって収入が減少した学生が多いことを考慮し、大学から全学生を対象に、「学生生活支援金」という名目で一律30,000円を支給することが発表されました。
この生活支援金についての用途は特に指定されておらず、学生が生活費等に自由に使用することができます。
そこでお聞きしたいのですが、この学生生活支援金は所得税の課税対象となるのでしょうか。
[回答]
ご相談の学生生活支援金については、所得税法上の「一時所得」として、所得税の課税対象となるものと考えられます。ただし、実際に所得税が発生する場合とそうでない場合がありますので、下記解説をご参照ください。
[解説]
1.学校法人からの給付金についての、税法上の基本的な考え方
所得税法では、学校法人を含む「法人」からの贈与により取得する金品(※1)による所得は、「一時所得」に該当し、所得税の課税対象となることが定められています(なお、「贈与」ではありますが、この場合は贈与税の課税対象とならないことが相続税法において定められています)。
2.学校法人からの給付金が非課税とされる場合
しかし、上記1.の一時所得に該当するものであっても、学資に充てるため給付される金品や扶養義務者相互間(父母と子、祖父母と孫など関係)において扶養義務を履行するため給付される金品については、所得税を課さない(非課税所得)と定められています。
3.用途が定められていない、大学からの給付金についての考え方
今回のご相談の場合、大学から支給される一律3万円の学生生活支援金は、その使途が学資に限られておらず、学生の生活費を含めた幅広い用途に使用することができるものであると思われます。
このため、上記2.の非課税所得に該当するとまでは言えないことから、上記1.の基本的な考え方にしたがって、所得税法上の「一時所得」として、所得税の課税対象となるものと考えられます。
ただし、その年の一時所得については最高50万円の特別控除額が設けられているため、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金など他の一時所得とされる金額との合計額が50万円を超えない限り、結果的に所得税は発生しないこととなります。
[参考]
所法9、22、34、相法21の3、所基通34-1、国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(令和2年5月15日更新)など
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